■ソフロロジー効果あり(1月12日午後3:00)
陣痛の間隔が5分ぐらいになってきた。5分おきに陣痛測定器の値が「20、30、45、50」とみるみる上がっていく。この時は90まで行った(自己新記録更新)。赤ちゃんの心拍数は140ぐらいで安定。「フゥーーーーーーーーー」できるかぎり長く息を吐く奥さん。これがソフロロジーの呼吸法らしい。人間は息を吐くときの方が痛みが和らぐそうで、5分おきの痛みはこれで何とか乗り切ることができてる。

奥さんがトイレに行きたいと言い出した。看護師さんに聞いて、子宮の開き具合をチェックしてもらう。この診断のとき俺は陣痛室から追い出されるんでどーやって調べてるか分からないが、ポリの手袋を付けているので直接手で調べているんじゃろう。この段階で子宮の開きは約5cm。全開まで半分じゃ。

「トイレで絶対にいきんじゃ駄目ですよ」と言われ、トイレが終わるまで看護師さんが外で待っていてくれた。本人いわく「力を入れずに用を足すのは難しかった」らしい。
これが妊婦として最後のトイレになった。


■ソフロロジー効果薄れる(1月12日午後3:30)
陣痛測定器がやっとはずれて、横を向けるようになった。この辺から奥さんが「腰が痛いよー」と言い出す。数ヶ月前に出産を終えた友人に、「旦那に腰をさすってもらっただけで楽になるんじゃけん」と言われていたので、とにかく腰をスリスリさすり続けた。

この位になると陣痛の間隔も3分おきぐらいになってきて、「フゥーーー」と息を吐く前に「ヒヘェエー」と思いっきり吸うようになった。大量の汗も出る。これを続けていると喉がカラカラになるので、アクエリアスを時々含ませる。たまごクラブに、「ジュースにストローを指して用意しておくと便利」とあったが、本当に便利だった。あと唇が乾いてカリカリベーコンみたいになってきたので、時々リップクリームを塗ってあげた。

明らかにさっきより苦しそうになってきて、陣痛室内に「ヒヘェエー」「フゥーーーーーーーー」「イッタァーイ」という声がこだまする。これを隣で見るのは結構辛かった。隣の布団で点滴を打っている妊娠6週の妊婦さんにはもっと辛かったじゃろう。小学生の頃、集団で予防注射を打ちにいって、先に注射を打たれた子が大泣きをしながら帰ってくるのを見るのと同じ気分かな。

俺には腰をさするのとリップクリーム塗りとアクエリアス補給しかできないので、ひたすらそれを続けた。畳の上に座って2時間以上横たわっている奥さんの腰をさすり続けたせいか、昔流行った金井克子の「パッパッパヤッパー、パールライス」のように手首が直角に曲がったまま戻らなくなった。

この時点で立ち会うことを決意。子宮の開きは6cm。あと4cmじゃ。


■さわっちゃイヤ〜ン(1月12日午後5:30)
俺の親が到着。奥さんの両親はどーしても仕事が抜けられないので、今日は来ることができないらしい。俺の両親が様子を見に来ると、奥さんが「すいません」とか言いながら座ろうとするので、3人が一斉に「寝たままで良いって!!」。こりゃー逆に気を使わすと思ったのか、飯を食いに行って来ると言って二人は出ていった。

また二人きりになって、奥さんはかなり苦しそうだったので腰をさする。お腹の方も辛いかなと思ってさわろうとしたら、「あ(「あ」に点々)ーーーーーー、お腹はさわっちゃ駄目ーーー!」と叫ぶのでビビッてしまった。

6時になって奥さんの夕食が届いたが本人は一切食う気なし。この日の献立はおでんじゃったけど、俺は昼に食ったお好み焼き(うどん入り)がまだ腹に残っていたので何も食わずに下げた。

奥さんの汗が尋常じゃないので、背中からうちわで仰ぐ。足がしびれて畳の上で人魚のような体勢でうちわを仰ぐ様は、端から見たらハーレム状態じゃったかもしれん。でもそんな優雅なもんじゃないんよ、実際。


■okonomi爆弾(1月12日午後6:30)
俺の親が夕食から帰ってきた。「あんた夕飯食べてないんでしょ、買ってきてあげたけん今のうちに食べんさい」。

お好み焼き(そば入り)。

「・・・・・・・」

俺と親の考えることは一緒なのか。陣痛室に持ってはいると、奥さんから拒絶反応が。「その匂い吐きそう、お願いだからどっか持っていって!」。この頃から吐き気をもよおすようになっていた。

せっかく買ってきてくれたし、ちょっと腹も減ってきたので自分の車に戻って速攻で食った。このあと数日間、車の中からお好み焼きのにおいが消えることはなかった。